2006年9月15日金曜日

SEA & FSIJ 合同フォーラム 〜オープンソースERP「ERP5」によるビジネスとテクノロジー〜

秋葉原ダイビルの産総研の会議室で行われたERP5のセミナーに行ってきた。
ERP5はフランスのNexedi(ネクセディ)という会社が開発しているオープンソースのERPソフトウェア。
以前、NexediのCEOであるジャン・ポールさんがPlone研究会で説明してくれたことがある。

以前のエントリ「ERP5」

今回はNexediのCTOをしているおくじさんによる解説。

おくじさんのブログ enbug diary

おくじさんとは数年前からメールのやりとりがあったのだが、お会いするのは今回が初めて。背広姿にちょっととまどったが、「ビジネス」のセミナーですからね。(^^)
会場には、Zope/Plone関係者の姿が多い。やっぱり皆気になっているんだ。
以下、セミナーのメモ。

・Nexediはパリから少し北のリール?という町にある。アフリカのセネガルにも支社がある。
 社員数は二十人くらい、できてから5年位。
・ERPで重要なのは、業務に必要なデータ(見積書、請求書など)を関連付けて管理できること。
 ERPは、インストール後にカスタマイズ/トレーニング/コンサルティングなどの仕事がはじまる。
 少なくとも3ヶ月くらい必要で、億単位でお金がかかる。
 企業内では、さまざまな部署間で多くのデータをやりとりしている。
 データのやりとりを手動でやっていると時間とコストがかかる。
 ERPがあれば、データの取得にほとんど時間がかからずにすむ。
 結果的にコストを下げることが可能になる。これがERPの魅力。
・ERPはアプリケーションというよりフレームワーク。この上にアプリケーションがのっかることになる。
 Webパブリッシング(CMS)やオンライン取り引きなどもERPに統合しようとしている。
 統合しないとデータの重複が起こって、問題になる。
・自分は普段はフリーソフトウェアといっているが、ビジネスではオープンソースというようにいわれている。
 最近のERPではオープンソースが流行。表面的なカスタマイズだけでは不十分。
 コアシステムまで手を入れられるオープンソースが重要。
・Nexediのはじまりは、水着の会社(Coramy)がプロプライエタリなERPを使っていたところ、そのベンダが倒産してしまい、にっちもさっちもいかなくなったこと。
 Coramyは、Nexediの最初の顧客。
・オープンソースだからといって、すべてを公開する必要はない。配らなければ公開しなくても問題なし。
 どこまで公開して、どこまで隠すかが重要。
・ERP5は、フレームワークと、その上で利用するBusiness Templatesからなる。
 Templatesは、ビジネスアプリケーションを作るための汎用のもの。これはXMLで書かれている。
・フランスの経営者向けのIT雑誌の2004年のERP部門で最優秀賞をもらった。
 ドイツのInfoterraという偵察衛星を使って写真を販売している会社でも採用されている。
 中央銀行や病院、フランスの水道局、セネガル共和国の公的機関、フランスの地方自治体、などでも利用されている。
・プロジェクトの推進は、Nexediとパートナーと顧客で行うことが多い。
・ERP5を利用する場合、
 * 顧客がすべて自分でやる
 * トレーニングを受けた顧客が自分でやる
 * Nexediあるいはパートナーに発注する
 という3種類がある。
・ERPの技術的なおもしろさ
 * ミッションクリティカル
 * データの種類が多い(50〜300が普通)
 * データ量が多い
 * 書込が頻繁(CMSでは全体のトランザクションの1%、ERPでは2割)
・ERP5の99%はPythonで書かれている。
 残りのほとんどはC。
 大きな声ではいえないが、Javaで書かれている部分もある。
・Pythonを採用した理由
 * オブジェクト指向。
 * classを自動生成するようなメタプログラミングができる。
 Rubyもメタプログラミングができるが、大規模開発に向かない点があるので、利用していない。
 この点については、まつもとさんに伝えてある。

・Zopeを採用している理由
 * ZODB。
 * Through The Web(TTW)、Web上で開発ができる。開発者にはあまり人気がないが、ユーザーには重要。
・ZSQLCatalog
 オブジェクトのインデックス化をする。
 ZCatalogと互換性がある。MySQLを利用している。
 MySQLとPostgreSQLを比較したところ、8倍MySQLのほうが速かった。
 O/R Mappingは一度作ったあとの変更に極めて弱い。
 O/R Mappingのその他の問題点
 * 列が多すぎ→性能低下
 * ロックの粒度が粗すぎ
 * 表が多すぎ→ロジックの分散
 オブジェクトデータベースはオブジェクトを復元しないと検索できない。
 ZSQLCatalogでは、オブジェクトの変更はオブジェクトデータベースでおこない、このオブジェクトデータベースをインデックス化してMySQLに入れて、検索する場合はこちらに検索をかける。インデックス化は遅延評価でOK。
 結果、変更に強く、検索が速くなる。低速なインデックス作成は後回しにできる。
 ZSQLCatalogは複数のデータベースに接続できるように作ってある。アダプタがあれば、どのようなデータベースにも接続できる。

・一応、日本でのローカライズもおこなったことがある。
 ERP5は日本の会計システムにも問題なく対応できる。

・通常、半年から一年かかる会計プロジェクトが3週間程度でできる。

 なぜこんなに早くできるかというと、ERP5が優れているから!
・ZODBにかわる高機能なオブジェクトデータベースを開発している。

 将来的にはこれをフリーにして公開する予定。
・Nexediのメンバーは技術を理解していないといけない。20人全員が開発経験あり。

・SAPはもともと巨大なシステムがあって、そこから不必要な部分を削って使いものになるシステムを作っていく。
 ERP5は逆で、赤ちゃんのような小さなところから作り上げていく。
 SAPもOracleも会計ベースのシステムになっている。これだと現実とシステムの間にずれが生じてしまう。

 ERP5では現実に生じたことを記録していくことで、ずれを生じさせないようになっている。
 ERP5はシミュレーション系のERP。業務をシミュレートして、将来の財務などの予測ができる。
・ERP5の情報は下記から得られる。
 http://erp5.org/
・Nexediは現在人材募集中
 * 日本でERP5のために働いてみたい方
 * 日本でNexediと一緒に働いてみたい企業
 * フランスに遊びにいきたい方

セミナー後の懇親会では、ずーずーしくもおくじさんのとなりに座り込みいろいろと話をさせてもらった。
迷惑だったかもしれませんが、とても楽しかったです。おくじさん、どうもありがとうございました。



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