2017年1月8日日曜日

ドレの旧約聖書・新約聖書

幼いころ通っていた幼稚園がキリスト教系で、月曜日の朝には礼拝堂に集まって神父様のお話を聞いたり、先生が紙芝居で見せてくれるキリスト教のお話なんぞを聞いて育ったせいか、昔からキリスト教には興味があった。一度きちんと聖書を読んでおきたいと思って何度か挑戦したのだが、今までは毎回挫折して途中で放り出してしまっていた。聖書の翻訳の言葉遣いが古くてわかりにくいし、どうにもつまらなくて読んでいられなかったのだが、今回、ようやく最後まで読み通せる聖書に出会ったので紹介しておきたい。それが、『ドレの旧約聖書』『ドレの新約聖書』だ。


楽園追放

この聖書の最大の特徴は、タイトルに「ドレの」とついているようにギュスターヴ・ドレのイラスト(版画)が前編にわたって掲載されていることだ。このイラスト(版画)が実にすばらしい! 生き生きとして、荘厳で、いつまでも眺めていたくなる。このイラストを見るだけでも、十分価値があると思う。文章は平易な現代語で、とても読みやすい。昔読んだ聖書で苦労したのがウソのようだ。


バベルの塔

で、読んだ感想なのだが、旧約聖書というのはユダヤ人の歴史を神話化してまとめたものだということがわかった。最初に出てくる創世記の前半に、天地創造・エデンの園・ノアの箱舟・バベルの塔などの有名な神話がまとまっていて、あとはほぼすべて中東の地におけるユダヤ人の戦乱と建国の歴史だ。もちろん神様は出てくるのだけど、歴史的な事実にあとから神様の話を突っ込んだんだろうなぁということが容易に想像できる。


キリスト生誕

新約聖書は、キリストの生誕から死、そしてその後の弟子たちによる布教活動をまとめたものだ。最後に出てくる黙示録が、ちょっと異質な感じ。キリストの教えは、逸話の中の例え話として出てくるものが多い。旧約聖書では神様自らが、あーしろこーしろ、この教えを守れ、と直接告げていたのだが、新約聖書ではキリスト(あるいは弟子)が語る例え話から教えを悟らせる(人によって解釈が変わる可能性がある)という形に変わっているのが興味深い。


最後の晩餐

旧約聖書というのはユダヤ教の聖書でもある。「旧約」というのは新約聖書を持つキリスト教徒だけの呼び方で、ユダヤ教徒にとっては単に聖書ということだ。旧約聖書に出てくる神は、あくまでもユダヤ人の神であって、他の民族の神ではない。なにせユダヤ人に土地を与えるために、そこに住んでいる他民族を殺し尽くし、財産を奪えとユダヤ人に命じたりするのだから、他の民族にとっては神どころではない迷惑な存在だ。ユダヤ人が旧約聖書を信じるのはわかる。なにせ、彼らのための神なのだから。わからないのは、ユダヤ人ではないキリスト教徒が旧約聖書を信じているということだ。旧約聖書を信じるなら、ユダヤ人以外の民族はユダヤ人に殺されるか、支配されるしか道がない。なぜこんな神をユダヤ人ではないキリスト教徒は受け入れられるのだろう?


十字架のキリスト

新約聖書を読めばこの疑問が解けるのではないかと思っていたのだが、なんとも納得できない気分だ。一応、キリストの死後ペトロという弟子に神が啓示を与えて、他の民族を受け入れるようになったという逸話はある。また、ユダヤ人の信徒の一部が他民族を受け入れることを咎め、これを弟子が説得する話もある。だが、それだけだ。これだけの話で、世界中のキリスト教徒が旧約聖書を読んで”神は偉大だ”と感じるようになるというのは、どうにも理解しがたい。まだほかに私が読み落としている何かがあるのだろうか?


ヨハネの黙示録

人の歴史として読み解くのであれば、ローマ帝国支配下にあったユダヤ人社会の権力者たちが保身のためにキリストを殺害し、さらに弟子たちにも弾圧を加えた。この弾圧から逃れ、キリストの教え・教会を維持・拡大するために、ユダヤ人以外の民族への布教が必要不可欠になったということだろう。新約聖書を読むかぎりでは、キリストの教えに選民的なものはないので、キリストの教えを伝えているだけなら何も問題はなかったはずだ。もし可能なら、当時どのようにキリスト教の布教をしていたのか、ぜひ知りたいところだ。また、現代の教会で旧約聖書に出てくる選民的な話をどのように信者に伝えているのかも、一度聞いてみたい。

私自身は、神や宗教というのは人間が創ったものだと思っている。無神論者というほど強いものではないが、少なくとも人間が創った宗教に出てくるような神は存在しないと考えている。
ここで述べてきたのは、そんな人間が聖書を読んだ感想だ。もしもキリスト教を信じる方で、この文章を読んで不愉快な思いをされた方がいたなら、お詫びをしておきたい。

さて、このドレのシリーズにはあと2冊、『ドレの失楽園』『ドレの神曲』がある。どちらもすでに購入済みなので、読むのが楽しみだ。まずは失楽園かな。

あと、ギュスターヴ・ドレのイラスト(版画)が掲載されている本のアーカイブがProject Gutenbergにあるので、リンクを張っておく。一見の価値があると思う。

Books by Doré, Gustave

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