2014年5月11日日曜日

漢字の使い分け・ことばの表記を知りたければ用字用語辞典を使おう

最近自分の周りでことばの表記で悩んでいる人が少なからずいるようなので、編集者が表記を調べるやり方を書いておく。と言っても、要するに用字用語辞典を引くだけの話なんだけど、この用字用語辞典というものを知らない人がとても多い。

用字用語辞典とは何かというと、ことばの使い方や表記の仕方を解説した辞典だ。国語辞典は、ことばの意味を解説した辞典なので、国語辞典を調べても正しい表記の仕方はわからない。しかし、出版関連の職業についている人以外で、このことを知っている人はほとんどいないように思う。これは、日本の国語教育で、用字用語辞典の存在もその使い方も教えないからだろう。私自身も編集者になるまで、用字用語辞典を使ったことはなかった。


今を去ること30年近い昔、編集プロダクションに入社したばかりの私に社長が用字用語辞典を渡して「これをひと通り読んでおけ」と言った。当時の私は生意気盛りだったので、「何言っているんだ、辞典は引くもので読むものじゃないだろう」と反発したのだが、その心を見透かしたように社長は「何かを"こえる"というときに使う漢字には"超"と"越"がある。お前はこの2つの表記の違いを説明できるか。どう使い分けるかわかっているのか」と質問してきた。この質問に私は答えられなかった。


ここで、ちょっと手元にある東京堂の用字用語辞典から一部を引用してみる。

越える・越す:例、山を越える。五十の坂を越える。困難を乗り越える。峠を越す。冬を越す。一般的な表記。

超える・超す:例、百万を超える。党派を超えて。制限量を超す。慣用的な表記。一定の範囲から外に出たり基準を上回る場合に用いる。「越える」または、かな書きでもよい。


これを読めば、"超"と"越"の使い分けができる。驚いている私に、社長はさらに「一般の人が辞書を引くと言えば、それは国語辞典のことだ。編集者が辞書を引くと言えば、それは用字用語辞典のことだ。丸暗記するくらいの気持ちで読め」と言った。まぁ、丸暗記こそしていないものの、それ以来30年近い編集者生活で用字用語辞典ほど頻繁に参照しているものはない。好きにはなれない社長だったが、用字用語辞典を読ませてくれたことには感謝している。


さてもうひとつ、よく原稿の表記で直しているものの例をあげておこう。"是非"と"ぜひ"だ。東京堂の用字用語辞典から一部を引用してみる。

是非:例、是非を論じる。是非に及ばない。注、「ぜひ来てほしい」などの場合は、かな書きでよい。


用字用語辞典も各社から出版されているが、使い勝手がいいのはやはり東京堂の用字用語辞典だと思う。私が渡り歩いてきた編集プロダクション・出版社の編集者の多くが、この用字用語辞典を使っていた。ただ、残念なことに今は品切れ状態で、中古品以外は入手できないようだ。数年前に東京堂に問い合わせた際に、改訂作業中で現在のものを増刷することはないと言われたのだが、まだ改訂作業が終わっていないのだろう。辞典の改訂はたいへんな作業なので、まだ時間がかかるのかもしれない。

一応中古品であれば、amazonでも入手できるようなので、興味のある人は購入してみるとよいだろう。ほかにもっとよい用字用語辞典を知っている人がいれば、ぜひ教えてほしい。





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